合同会社でも代表者住所を非表示にできる?制度改正の最新動向を税理士が解説
「合同会社を設立したいけれど、自宅住所の公開が気になる」
会社設立をご検討されている方から、このようなご相談をいただくことがあります。
会社の代表者住所は、法人登記制度における重要な情報の一つです。一方で、自宅を事業の拠点として起業する方が増えるなか、プライバシー保護の観点から住所の表示範囲を見直す必要性も指摘されています。
現在、一定の要件を満たす株式会社では、代表者住所の一部を登記事項証明書などに表示しない「代表取締役等住所非表示措置」を利用できますが、合同会社は対象外です。
しかし、令和8年6月29日に公表された政府の「規制改革推進に関する答申」では、合同会社を含む法人への対象拡大を検討する方向性が示されました。
この記事では、住所の確認方法を詳しく紹介するのではなく、合同会社における現在の取扱いと、今後の制度見直しの方向性、会社設立時に確認しておきたい注意点を京都の税理士が解説します。
合同会社の代表社員の住所はどのように扱われる?
合同会社の代表社員の住所は、現行の法人登記制度では登記事項とされています。
そのため、自宅を住所として登記する場合には、プライバシー面も含めて慎重に検討する必要があります。
ただし、会社設立にあたって重要なのは、住所の公開だけを過度に不安視することではありません。
本店所在地の選び方、事業上の信用、金融機関との取引、郵便物の受取り、賃貸借契約上の制限などを総合的に確認することが大切です。
特に、自宅を事業拠点として利用する場合には、次の点を事前に確認しておきましょう。
・賃貸住宅の場合、事業利用や法人登記が認められているか
・郵便物や重要書類を確実に受け取れるか
・取引先や金融機関への説明に支障がないか
・将来、事務所を移転した場合の登記手続や費用を見込んでいるか
現在の代表取締役等住所非表示措置とは
令和6年10月1日から、一定の要件を満たす株式会社では「代表取締役等住所非表示措置」を利用できるようになりました。
この措置は、株式会社の代表取締役、代表執行役または代表清算人の住所について、市区町村より後の部分を登記事項証明書などに表示しない取扱いとする制度です。
ただし、代表者の住所そのものを登記しなくてよい制度ではありません。
法務局には住所を登記したうえで、一般に交付または提供される登記事項証明書などへの表示を一部制限する仕組みです。
また、現行制度では、住所が登記される一定の登記申請と同時に申し出る必要があり、所定の書類も求められます。
現時点では合同会社は制度の対象外です
現行の代表取締役等住所非表示措置は株式会社を対象とした制度であり、合同会社の代表社員は利用できません。
株式会社で制度が始まったことから、「合同会社でも同じように利用できるのではないか」と誤解されることがありますが、現在の取扱いは異なります。
合同会社の設立をご検討中の方は、将来の制度改正の可能性と、現在利用できる制度とを分けて考える必要があります。
制度改正の方向性が示されていても、施行前に自動的に適用されるわけではありません。
実際にあったお問い合わせ
株式会社では代表者住所の一部を非表示にできると聞きました。合同会社でも利用できますか?
現時点では利用できません。
現在の代表取締役等住所非表示措置は株式会社を対象としており、合同会社の代表社員は対象外です。
ただし、政府の答申では合同会社を含む法人への対象拡大を検討する方向性が示されています。今後の法令改正や法務省の発表を確認する必要があります。
合同会社は、株式会社と比べて設立時の費用を抑えやすく、運営方法の自由度も比較的高い会社形態です。
そのため、次のようなケースで選択されることがあります。
・個人事業から法人成りする場合
・副業を法人化する場合
・ネットショップやIT事業を始める場合
・コンサルティング業を法人化する場合
・不動産管理会社を設立する場合
自宅を事業拠点とするケースもあるため、代表社員の住所の取扱いは、会社形態を選ぶ際の検討事項の一つになります。
今後は合同会社も対象になる可能性があります
令和8年6月29日に公表された政府の「規制改革推進に関する答申」では、法人登記における代表者住所非表示措置について、対象の拡大と運用の改善を検討する方向性が示されました。
答申では、株式会社に限らず、合同会社を含む法人についても代表者住所非表示措置を利用できるよう検討することが盛り込まれています。
また、現在のように住所が登記される一定の登記申請と同時に申し出る方法だけでなく、住所非表示措置を単独で申し出られる仕組みを検討する方向性も示されています。
制度見直しが実現すれば、これから合同会社を設立する方だけでなく、すでに設立している合同会社にも利用の機会が広がる可能性があります。
ただし、現時点では制度見直しの方向性が示された段階です。合同会社が実際に利用できる制度が正式に施行されたわけではありません。
制度が拡大された場合に期待されること
代表社員の住所非表示措置が合同会社にも拡大されれば、自宅を事業の拠点として起業する方にとって、プライバシー保護の選択肢が広がります。
特に、自宅兼事務所で事業を始める方や、家族と同居している方にとっては、生活上の住所と事業活動との関係を見直しやすくなると考えられます。
制度の拡大により、次のような効果が期待されます。
・自宅で起業する方の心理的負担が軽減される
・家族のプライバシーに配慮しやすくなる
・会社形態を選択する際の不均衡が緩和される
・既存の合同会社にも利用機会が広がる可能性がある
一方で、実際の対象者、申出方法、必要書類、開始時期については、今後の制度設計を確認する必要があります。
住所非表示措置を利用する場合の注意点
住所非表示措置にはプライバシー保護のメリットがありますが、利用による影響も考慮する必要があります。
法務省は、登記事項証明書などによって会社代表者の詳しい住所を証明できなくなるため、融資や不動産取引などで追加書類が必要になる可能性があると案内しています。
想定される主な場面は次のとおりです。
・金融機関から融資を受ける場合
・法人口座を開設する場合
・不動産を売買または賃貸する場合
・契約上の本人確認や住所確認が必要となる場合
また、住所非表示措置を利用しても、税務署、金融機関、行政機関などへの住所の届出や本人確認が不要になるわけではありません。
住所の登記義務そのものが免除される制度でもないため、住所変更があった場合には必要な登記手続を行う必要があります。
コメント
合同会社の設立をご検討される方から、「自宅住所の公開が気になる」「家族のプライバシーに配慮したい」というご相談をいただくことがあります。
現行制度では合同会社は代表取締役等住所非表示措置の対象外ですが、今回の答申では、合同会社を含む法人へ対象を広げる方向性が示されました。
制度見直しが実現すれば、これから合同会社を設立される方だけでなく、すでに合同会社を経営されている方にとっても、プライバシー保護の選択肢が増える改正になると考えられます。
ただし、現時点では答申に方向性が示された段階です。実際に利用できる時期、対象者、申出方法、必要書類については、今後の法令改正や法務省から公表される内容を確認する必要があります。
合同会社と株式会社のどちらを選択するかは、住所の取扱いだけでなく、設立費用、運営方法、信用面、資金調達、将来の事業展開なども踏まえて検討することが大切です。
合同会社の代表者住所に関するよくある質問
Q1.現在、合同会社でも代表者住所を非表示にできますか?
現在の代表取締役等住所非表示措置は株式会社を対象としているため、合同会社の代表社員は利用できません。
Q2.合同会社も住所非表示措置の対象になりますか?
令和8年6月29日に公表された「規制改革推進に関する答申」では、合同会社を含む法人へ対象を拡大する方向性が示されています。
ただし、現時点では正式に制度が開始されたわけではありません。
Q3.制度はいつから変わりますか?
現時点では、合同会社が利用できる具体的な開始日は明らかになっていません。
今後の法令改正や法務省から公表される情報を確認する必要があります。
Q4.すでに設立している合同会社も対象になりますか?
答申では、住所に関する登記申請と同時でなくても、住所非表示措置を単独で申し出られる仕組みを検討する方向性が示されています。
制度見直しが実現すれば、すでに設立している合同会社も利用できる可能性がありますが、具体的な対象や要件は今後決定されます。
Q5.住所非表示措置を利用すると、住所の登記や届出は不要になりますか?
いいえ。住所非表示措置は、登記事項証明書などへの表示を一部制限する制度です。
住所の登記義務や、税務署、金融機関、行政機関などへの届出、本人確認が不要になるわけではありません。
Q6.住所非表示措置を利用すると、融資や契約に影響がありますか?
代表者の詳しい住所を登記事項証明書だけで確認できなくなるため、金融機関との取引や不動産取引などで追加書類を求められる可能性があります。
利用前に、事業上の取引への影響も含めて検討することが大切です。
Q7.本店所在地を自宅以外にすれば、代表社員の住所の問題は解決しますか?
本店所在地と代表社員個人の住所は別の登記事項です。
本店所在地だけを事務所やバーチャルオフィスなどに変更すれば、代表社員の住所に関する取扱いも自動的に変わるわけではありません。
まとめ
現在、合同会社の代表社員は、代表取締役等住所非表示措置を利用できません。
一方、令和8年6月29日に公表された「規制改革推進に関する答申」では、次の方向性が示されました。
・合同会社を含む法人へ制度の対象を拡大すること
・住所に関する一定の登記申請と同時でなくても、非表示措置を申し出られる仕組みを検討すること
ただし、現時点では、合同会社が利用できる制度が正式に施行されたわけではありません。
合同会社の設立をご検討中の方は、住所の取扱いだけで会社形態を決めるのではなく、設立費用、運営方法、信用面、資金調達、将来の事業展開なども含めて総合的に検討することが大切です。
参考資料
・法務省「代表取締役等住所非表示措置について」
・規制改革推進会議「規制改革推進に関する答申」(令和8年6月29日)
※本記事は令和8年7月時点の情報をもとに作成しています。今後の法令改正や制度変更により、内容が変更される場合があります。






