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事業用の土地・建物の買換え特例が2029年3月まで延長|令和8年度改正で変わる点(会社・個人事業者向け)

会社や個人事業者が、事業に使っている土地や建物を売って、新しい土地や建物に買い換えることがあります。このとき、売ったもうけ(売却益)にかかる税金の一部を将来に先送りできる特例があります(正式名称:特定の資産の買換えの場合の課税の特例。個人は「特定の事業用資産の買換えの特例」)。

令和8年度(2026年度)の税制改正で、この特例が3年延長され、対象になる買換えの条件も見直されました。

<この記事の監修者>

監修者(吉本貴幸)

吉本 貴幸(よしもと たかゆき)
税理士法人吉本事務所
代表社員 税理士・行政書士

1973年生まれ 法学修士。1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に努めている。

この記事のポイント

  • 会社の場合、適用期限が2029年(令和11年)3月31日までに延びました(個人事業者も、よく使われる「10年超の土地建物からの買換え」は同じ日までです)。
  • 10年を超えて持っていた土地建物からの買換えでは、買い換える建物・構築物が、事務所・工場・店舗などの施設に関係するものに限られました。
  • 既成市街地等の中で、市街地再開発事業などの土地の有効利用の施策に伴って買い換える場合、買換資産が指定された区域の外にあると、先送りできる割合が80%から60%に下がりました(「10年超の土地建物からの買換え」とは別の区分の見直しです)。
  • これらの見直しは、原則として2026年4月1日以後に売却し、同日以後に買換資産を取得する場合から適用されます。

そもそも、どんな特例?

事業に使っている土地や建物を売り、決められた期間内に買換資産を取得して、取得から1年以内に事業に使った場合、売却益のうち原則80%にかかる税金を先送りできます。残りの20%には、売った年(会社は売った事業年度)に税金がかかります。ただし、80%を先送りできるのは、買換資産の購入額が売った金額以上の場合です。購入額が売った金額より少ないと、先送りできる金額も少なくなります。

例えば、個人事業者が土地建物を1億円で売り(取得費と売るときの費用の合計は2,000万円)、6,000万円の土地建物に買い換えた場合、売却益8,000万円のうち税金がかかるのは4,160万円です。単純に20%の1,600万円にはなりません。

(計算の内訳:売却益8,000万円 × 80% × 買換資産6,000万円 ÷ 売った金額1億円 = 3,840万円を先送り。8,000万円 − 3,840万円 = 4,160万円に課税)

ただし、税金がなくなるわけではありません。買換資産の税務上の取得価額を低くするなどして先送りするため、その後の減価償却費が少なくなったり、将来その資産を売ったときに税金がかかったりします。会社の圧縮記帳には、帳簿価額を直接減らす方法のほか、積立金として経理する方法もあります。

項目会社(法人)個人事業者
しくみ圧縮記帳(買換資産の帳簿価額を減らす方法、または積立金として経理する方法)売却益の一部への課税を繰り延べる(買換資産の取得価額を引き継ぐ)
先送りできる割合原則80%(地域などにより60〜90%)原則80%(地域などにより60〜90%)
適用期限2029年(令和11年)3月31日まで2029年(令和11年)12月31日まで(10年超の土地建物からの買換えは同年3月31日まで)

よく使われる「10年超の土地建物からの買換え」

この特例にはいくつかの組み合わせがありますが、よく使われるのは、10年を超えて持っていた国内の土地・建物・構築物を売り、国内の一定の土地・建物・構築物に買い換えるケースです。主な条件は次のとおりです。

  • 売った土地建物を、売った年の1月1日時点で10年を超えて持っていること
  • 買い換える土地は300㎡以上で、事務所・工場・店舗・住宅などの施設(福利厚生施設を除く)の敷地であること(原則として、売った土地の面積の5倍までの部分が対象)
  • 【改正】買い換える建物は、これらの施設に使うものであること
  • 【改正】買い換える構築物は、これらの施設での事業に必要なものであること(施設に付いている立体駐車場なども含まれると考えられています)

既成市街地等での買換えは割合が下がる場合も

この特例には、「既成市街地等の中で、市街地再開発事業などの土地の有効利用の施策に伴って土地等を買い換える」という区分もあります。この区分で、買換資産が大都市の中心部などの「既成市街地等」にある場合は、次のように変わりました。上で説明した「10年超の土地建物からの買換え」には、この見直しは当てはまりません。

  • 防災再開発促進地区、特定都市再生緊急整備地域、都市機能誘導区域など、指定された区域の中:これまでどおり80%。ただし、その区域内であることを証明する書類を、申告書に付ける必要があります。
  • 指定された区域の外:80%から60%に下がります。

京都市は、この改正でいう「大都市」に当たります。大都市では、指定された区域のうち、都市再開発の方針で定められた地区(いわゆる2号地区)の中にあるものに限って80%になります。京都市の都市機能誘導区域は、「京都市持続可能な都市構築プラン」で「広域拠点エリア」と「らくなん進都」に定められています(京都市都市計画局の資料による)。ただし、それだけでは足りず、2号地区の中にあるかどうかを確かめる必要があります。京都市内で買い換えを予定している場合は、買う前に京都市の都市計画の窓口で場所を確認しておくと安心です。

そのほかの改正点

  • 航空機の騒音がある区域の内から外への買換えのうち、防衛施設周辺の第二種区域に関するものが、対象から外れました。
  • 船舶の買換えでは、建設業とひき船業に使う船のうち、エンジンの出力が小さいもの(合計1,500kW以下)が対象から外れました。建設業・ひき船業に使う船の買換えの適用期限は、会社が2028年3月31日まで、個人が2028年12月31日までです。

忘れやすい「届出」に注意

この特例を使うには、申告のときだけでなく、売った後や買った後の早い時期に、税務署へ届出書を出す必要があります。個人事業者の場合、売った年に買い換えるときは、売った日か買った日の早いほうを含む3か月の期間の末日の翌日から、2か月以内が期限です。会社にも同じような届出の期限があります。

届出を忘れると、特例を使えなくなります。売買の契約をする前に、税理士にご相談ください。

よくある質問

いつまでに売れば使えますか?

会社の場合は、2029年(令和11年)3月31日までの売却が対象です。個人事業者も、10年超の土地建物からの買換えは同じ日までです。

2026年3月までに売った場合も、改正後のルールになりますか?

なりません。今回の見直しは、原則として2026年4月1日以後に売り、同日以後に買い換える場合から適用されます。

税金はなくなるのですか?

なくなりません。買換資産の税務上の取得価額を低くするなどして、税金を将来に先送りするしくみです。

まとめ

  • 事業用の土地建物の買換えの特例が、会社は2029年3月31日まで延長されました。
  • 10年超の土地建物からの買換えでは、買い換える建物・構築物が事業用の施設に関係するものに限られました。
  • 既成市街地等での市街地再開発事業などに伴う買換えは、買換資産が指定区域の外だと、先送りできる割合が60%に下がります。
  • 届出書の期限があるので、売買の契約前の相談が大切です。

事務所・店舗・工場の移転や買い替えをお考えの方は、売る前の段階でご相談ください。

参考資料

・財務省「令和8年度税制改正の解説」

・国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」

※本記事は令和8年10月時点の情報をもとに作成しています。

(2026年10月記載)

(注)当ホームページに記載しております情報の正確性については万全を期しておりますが、 これらの情報に基づき利用者自らが税務申告や各種手続きをされた場合の税務上その他 一切の法律上の責任は保障することはできません。ご了承ください。

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