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少額減価償却資産の特例が30万円未満から40万円未満に|2029年3月まで延長|令和8年度改正(開業・会社設立の方向け)

パソコンや複合機、店舗の備品、ソフトウエアなど、事業で使う物を買ったとき、本来は何年かに分けて経費にする(減価償却する)必要があります。ただ、中小企業や個人事業者には、一定の金額未満の物なら、事業で使い始めた年に全額を経費にできる特例があります(中小企業者等の少額減価償却資産の特例)。

令和8年度(2026年度)の税制改正で、この特例の対象が1個(1組)30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限も3年延長されました。開業や会社設立のときは備品をそろえることが多いので、知っておきたい改正です。

開業や設立の年は、パソコンや机、応接セットなどの購入が重なりがちです。30万円以上40万円未満の物も、使い始めた年に一度に経費にできるので、利益が出る年なら税金の負担を軽くできます。

<この記事の監修者>

監修者(吉本貴幸)

吉本 貴幸(よしもと たかゆき)
税理士法人吉本事務所
代表社員 税理士・行政書士

1973年生まれ 法学修士。1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に努めている。

この記事のポイント

  • 2026年4月1日以後に買った物は、1個(1組)40万円未満まで、事業で使い始めた年に全額を経費にできるようになりました(改正前:30万円未満)。
  • 適用期限が2029年(令和11年)3月31日まで3年延長されました(この日までに取得し、事業で使い始めることが必要です)。
  • 1年間で経費にできる合計額の上限は、これまでどおり300万円です。
  • 青色申告をしている中小企業・個人事業者が対象です。従業員数の基準は、500人以下から400人以下に引き下げられました。

そもそも、どんな特例?

事業で使う物は、買った金額によって経費にする方法が変わります。なお、経費にできるのは、買っただけでなく事業で使い始めた年(会社は使い始めた事業年度)です。例えば12月決算の会社が2026年12月に買い、2027年1月から使い始めた場合は、2027年12月期の経費になります。中小企業や個人事業者の場合、主な扱いは次のとおりです。

1個(1組)の金額経費にする方法
10万円未満事業で使い始めた年に全額を経費にできる(すべての事業者)
10万円以上20万円未満3年間で均等に経費にできる(一括償却資産)、またはこの特例
10万円以上40万円未満この特例で、事業で使い始めた年に全額を経費にできる(年300万円まで)
※2026年3月31日までに買った物は30万円未満
上記以外耐用年数に応じて、何年かに分けて経費にする(減価償却)

対象になるのは、パソコン・複合機・机や棚などの備品、機械、ソフトウエアなどです。中古品も対象になります。ただし、人に貸すための物(貸付けが主な事業である場合を除く)は対象外です。

対象になる会社・個人事業者

  • 会社:青色申告をしている中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)で、常時使用する従業員が400人以下であること(改正前:500人以下)
  • 個人事業者:青色申告をしていて、常時使用する従業員が400人以下であること(改正前:500人以下)

白色申告の個人事業者は使えません。開業するときに青色申告の承認申請をしておくことが前提になります。

青色申告の承認申請の期限は、次のとおりです。

  • 個人事業者:開業日から2か月以内(1月15日以前に開業した場合は、その年の3月15日まで)
  • 会社:設立日から3か月を経過した日と、最初の事業年度の終了日のうち、早いほうの日の前日まで

年300万円の上限と、事業年度が1年未満の場合

この特例で経費にできるのは、1年間(会社は1事業年度)の合計で300万円までです。300万円を超えた分は、通常の減価償却など、別の方法で経費にします(20万円未満の物は一括償却資産も選べます)。300万円の枠は1個(1組)ごとに判定するので、1台の取得価額を分けて枠を使い切ることはできません。

会社を設立した最初の事業年度のように、事業年度が1年に満たない場合は、上限も月数に応じて減ります。例えば、最初の事業年度が6か月なら、上限は300万円 × 6/12 = 150万円です。設立直後にまとめて備品を買う場合は注意が必要です。

いつ買った物から40万円未満になる?

40万円未満への引上げは、2026年4月1日以後に買った物(作った物を含む)から適用されます。同じ年や同じ事業年度の中でも、3月31日までに買った物は30万円未満、4月1日以後に買った物は40万円未満で判定します。

見落としやすい「償却資産の申告」

この特例で全額を経費にした物も、固定資産税(償却資産)の申告の対象になります。10万円未満で一度に経費にした物や、3年で経費にする一括償却資産とは扱いが違うので注意が必要です。ただし、ソフトウエアなどの形のない資産は、償却資産の申告の対象外です。

償却資産の申告は、毎年1月1日時点で持っている事業用の資産について、原則として1月31日までに市区町村(京都市内なら京都市)に行います(休日の関係で期限がずれる年もあります)。

手続き

  • 会社:買った物を事業に使った事業年度に、取得価額を損金として経理し、確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7))」を付けます。
  • 個人事業者:青色申告決算書の減価償却費の計算欄に記載し、特例を使う旨を書きます。

なお、ほかの特別償却や税額控除の特例とは、同じ資産について重ねて使えません。

よくある質問

35万円のパソコンは、全額を1年で経費にできますか?

2026年4月1日以後に買ったものなら、青色申告をしていて他の条件を満たせば、この特例で、事業で使い始めた年に全額を経費にできます(年300万円の範囲内)。2026年3月31日までに買ったものは対象外です。

消費税込みの金額で判定しますか?

経理の方式によります。税抜経理なら税抜の金額、税込経理なら税込の金額で判定します。免税事業者は税込の金額で判定します。

設立したばかりの会社でも使えますか?

青色申告の承認を受けていれば使えます。ただし、最初の事業年度が1年未満の場合は、300万円の上限も月数に応じて少なくなります。

<税理士からのひとこと>

備品を経費にする方法には、少額減価償却資産の特例、一括償却資産、普通の減価償却があり、それぞれ特性が違います。

  • 少額減価償却資産の特例:全額を使い始めた年の経費にできますが、償却資産税の対象になります。
  • 一括償却資産:耐用年数に関わらず、3年間で均等に(3分の1ずつ)経費にします。償却資産税の対象になりません。
  • 普通の減価償却:償却資産税がかかります。また、備品の種類によっては、少額減価償却資産の特例や一括償却資産より耐用年数(償却期間)が長くなり、経費にするまでに時間がかかり、1年間の償却額(費用の額)が低くなるケースがあります。

どの方法を選ぶかは、決算や申告書を作るときに決めます。利益の額を見ながら決めればよく、利益を出す必要がある場合は、一括償却資産や普通の減価償却を選ぶこともあります。

まとめ

  • 2026年4月1日以後に買った物は、1個(1組)40万円未満まで、事業で使い始めた年に全額を経費にできるようになりました。
  • 適用期限は2029年3月31日まで、年300万円の上限は変わりません。
  • 青色申告が前提です。設立初年度など事業年度が1年未満の場合は上限が減ります。
  • 特例で経費にした物も、償却資産の申告が必要です(ソフトウエアなどは対象外)。

開業や会社設立に合わせた備品の購入、青色申告の届出などは、設立前の段階からご相談ください。

参考資料

・財務省「令和8年度税制改正の解説」

・国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

※本記事は令和8年10月時点の情報をもとに作成しています。

(2026年10月記載)

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