インボイスの2割特例が終了、個人事業主は「3割特例」へ|法人成りすると使えない?|令和8年度改正(開業・会社設立の方向け)
インボイス制度をきっかけに、免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)になった方は、消費税の納税額を売上げにかかる消費税の2割に抑えられる「2割特例」を使うことができました。
この2割特例は、2026年(令和8年)9月30日を含む課税期間で終わります(個人事業者は2026年分まで)。令和8年度(2026年度)の税制改正で、その後の負担を和らげる「3割特例」が新しく設けられましたが、使えるのは個人事業者だけで、法人(会社)は使えません。
個人事業から会社への切り替え(法人成り)を考えている方は、消費税の負担がどう変わるかも知っておきたい改正です。
<この記事の監修者>

吉本 貴幸(よしもと たかゆき)
税理士法人吉本事務所
代表社員 税理士・行政書士
1973年生まれ 法学修士。1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に努めている。
この記事のポイント
- 個人事業者は、2027年分・2028年分(令和9年分・令和10年分)の2年間、消費税の納税額を売上げにかかる消費税の3割にできます(3割特例)。
- 3割特例は個人事業者だけの制度です。法人は使えません。
- 3割特例が終わった後や、法人になった後は、簡易課税か一般課税で申告します。簡易課税への切り替えを楽にする措置も設けられました。
- 法人成りすると3割特例が使えなくなるため、法人成りの時期を決めるときは、消費税の負担の違いも確認しておく必要があります。
2割特例と3割特例のちがい
| 2割特例 | 3割特例 | |
|---|---|---|
| 納税額 | 売上げにかかる消費税の2割 | 売上げにかかる消費税の3割 |
| 対象 | 個人事業者・法人 | 個人事業者のみ |
| 使える期間 | 2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間 (個人事業者は2026年分まで、3月決算の法人は2027年3月期まで) | 2027年分・2028年分 |
| 事前の届出 | 不要(確定申告書に記載) | 不要(確定申告書に記載) |
3割特例を使える主な条件は、次のとおりです。
- 個人事業者であること
- インボイス発行事業者の登録を受けたことで課税事業者になっていること(登録をしていなければ免税事業者だった方)
- 基準期間(その年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること(2027年分なら2025年、2028年分なら2026年の売上げで判定)
2割特例と同じく、仕入れのインボイスを保存していなくても、売上げにかかる消費税が分かれば納税額を計算できます。なお、課税期間を短縮する特例を受けている場合などは使えません。
3割特例の基本的な内容は、令和8年度消費税改正 令和9年はインボイスは3割特例個人事業者のみでも解説しています。
なぜ法人は3割特例を使えないのか
財務省の「令和8年度税制改正の解説」では、法人を対象外とした背景として、主に次の2点が挙げられています。
- 2割特例の使われ方の中に、もともと課税事業者である会社が新しく会社を作って2割特例を使い、グループ全体の消費税の納税額を減らすなど、制度の不適切な利用と思われる例があったこと
- 法人は、個人事業者に比べて、複式簿記での記帳や多くの決算書類の作成が求められており、事務を処理する力が相対的に高いと考えられること
そのうえで、事務の負担への配慮がより必要な個人事業者に限って、2割特例の終了後さらに2年間、3割特例を設けることとされました。
法人成りすると、消費税はどう変わる?
個人事業者のまま3割特例を使う場合と、法人成りして簡易課税を使う場合とで、納税額を比べてみます。
例)税抜の売上げ800万円(消費税80万円)、サービス業の場合
| 申告の方法 | 納税額 |
|---|---|
| 2割特例(2026年分まで) | 80万円 × 20% = 16万円 |
| 3割特例(個人事業者・2027年分と2028年分) | 80万円 × 30% = 24万円 |
| 簡易課税(サービス業:みなし仕入率50%) | 80万円 × 50% = 40万円 |
※売上げがすべて標準税率(10%)の場合の概算です。
同じ売上げでも、個人事業者のまま3割特例を使えば24万円、法人成りして簡易課税にすると40万円と、年16万円の差が出ます。2027年・2028年に法人成りを考えている方は、この差も判断材料に入れておきましょう。
なお、資本金1,000万円未満で設立した会社は、一定の例外を除き、設立1期目・2期目は消費税の納税義務が免除されます(1期目が1年に満たない場合は、免除される期間も丸2年にはなりません。また、1期目の上半期の売上げと給与の額がいずれも1,000万円を超える場合などは、2期目は免除されません)。ただし、取引先からインボイスを求められて登録すると、その時点から課税事業者になり、法人なので3割特例は使えません。
簡易課税のほうが有利な業種もある
簡易課税は、売上げにかかる消費税に、業種ごとの「みなし仕入率」を掛けた額を仕入れの消費税とみなして計算する方法です。
| 業種(事業区分) | みなし仕入率 |
|---|---|
| 第1種(卸売業) | 90% |
| 第2種(小売業など) | 80% |
| 第3種(製造業・建設業など) | 70% |
| 第4種(飲食店業など) | 60% |
| 第5種(サービス業など) | 50% |
| 第6種(不動産業) | 40% |
卸売業(90%)や小売業(80%)のように、みなし仕入率が70%を超える業種では、3割特例より簡易課税のほうが納税額は少なくなります。また、設備投資などで仕入れの消費税が多い年は、一般課税にすれば還付を受けられる場合があります。3割特例は事前の届出が不要で、要件を満たせば申告のときに選べます。ただし、簡易課税を使う・やめるには届出の期限などの条件があるため、一般課税を含めた比較は早めに行いましょう。
簡易課税への切り替えが楽になりました
簡易課税は、原則として、使いたい課税期間が始まる前の日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出す必要があります。今回の改正で、2割特例や3割特例を使った課税期間の次の課税期間については、その申告期限までに届出書を出せば、その課税期間から簡易課税を使えるようになりました。
- 個人事業者:2028年分で3割特例を使った場合、2029年分の申告期限(2030年4月1日)までに届出書を出せば、2029年分から簡易課税を使えます。
- 法人(3月決算の例):2027年3月期で2割特例を使った場合、2028年3月期の申告期限(2028年5月31日)までに届出書を出せば、2028年3月期から簡易課税を使えます。
なお、簡易課税を選ぶと、原則として2年間は続けて使う必要があります。また、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間に限られます。
よくある質問
3割特例を使うには、事前に届出が必要ですか?
必要ありません。確定申告書に3割特例を使う旨を書けば、適用を受けられます。
2027年に法人成りする予定です。個人事業の分は3割特例を使えますか?
個人事業者としての2027年分の申告では、条件を満たせば3割特例を使えます。法人成りした後の会社の申告では使えません。
2割特例を使っていた会社は、これからどうすればよいですか?
簡易課税か一般課税で申告します。2割特例を使った次の事業年度は、その申告期限までに届出書を出せば簡易課税を選べるので、業種や仕入れの状況を見て、有利なほうを選びましょう。
<税理士からのひとこと>
法人成りの時期は、所得税と法人税の差、社会保険料、消費税の免税期間などを合わせて判断するのが基本です。今回の改正で、2027年・2028年は個人事業者にだけ3割特例が残るため、消費税だけを見ると、個人事業のまま続けたほうが有利になる場面も出てきます。
一方で、利益が大きくなっている方は、法人成りによる税金の軽減効果が、消費税の増加を上回ることも多くあります。数字で比べてから決めることをおすすめします。
まとめ
- 2割特例は、2026年9月30日を含む課税期間で終わります(個人事業者は2026年分まで)。
- 個人事業者は、2027年分・2028年分に3割特例を使えます。法人は使えません。
- 法人成りすると3割特例が使えなくなるため、簡易課税などとの差を確認してから時期を決めましょう。
- 2割特例・3割特例を使った次の課税期間は、申告期限までの届出で簡易課税に切り替えられます。
法人成りのメリット・デメリット全体については、個人事業者が株式会社を設立することのメリット・デメリットもご覧ください。
法人成りの時期や消費税の申告方法の選択は、会社設立の前の段階からご相談ください。
参考資料
・財務省「令和8年度税制改正の解説」(消費税法等の改正)
・国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス経過措置の見直し等)」
※本記事は令和8年10月時点の情報をもとに作成しています。
(2026年10月記載)
(注)当ホームページに記載しております情報の正確性については万全を期しておりますが、 これらの情報に基づき利用者自らが税務申告や各種手続きをされた場合の税務上その他 一切の法律上の責任は保障することはできません。ご了承ください。